野月浩貴八段による「渡部愛強化カリキュラム」は、従来の勉強法とはまるで違うものだった。 それまで渡部が重視していたのは「研究会」と呼ばれる棋士同士の練習対局で実戦感覚を磨くもので、自宅では棋譜並べや詰将棋、対戦相手の下調べを中心に行っていた。だが、野月はその真逆とも言えるアプローチで渡部を鍛えた。 何局も指すのではなく、感想戦をじっくりと行う。一局の将棋をとことん掘り下げて、考える力を養うものだった。それまで研究会重視だった渡部は「今、考えると、当時は自宅でやる勉強時間が少なすぎました」と反省の言葉を述べる。