フランスの思想家ジョルジュ・バタイユが、自ら事務局長を務めたグラビア雑誌『ドキュマン』で論じた、毛髪や泥、蜘蛛、痰といった、定まった理想の形を持たず、また何かの象徴として詩的な言語に置き換えられることのないような、取るに足りない物質を指す言葉。アンドレ・ブルトンにシュルレアリスムを除名された詩人や画家たちが集った同誌で、バタイユは、シュルレアリスムに潜むひとつの理念へと上昇しようとする志向を観念論として退ける一方で、同誌に掲載された足の親指や屠殺場などの大判の写真図版が示すように、身体を持ち都市を生きる人間がしばしば直視することを避けてしまう、不定形な物質としての現実を肯定する議論を展開した。 1996年、美術史家・美術評論家のイヴ=アラン・ボワとロザリンド・クラウスは、共同企画「アンフォルム:使用の手引き」(ポンピドゥ・センター、パリ)のなかで、モダニズムの進歩史観や絵画の自律性にまつわ