「心が折れる」小説とはこういうものだろうか。倫理と生理を総動員しての拒絶反応と幻想がもたらす快楽の板挟みによるサブミッション攻撃。津原泰水という人は、美しいものを醜く、あるいは醜いものを美しく表現する悪魔的な文才の持ち主なのだろうか。この異形のことばたちの前では、あの「妖都」もただの習作に思えるほどです。 しかもこの作品集、収録作15本のほぼすべてがそれぞれ異なる文体で書かれているという凝りよう。短編一本ずつに、ここまでするのか……。たまげ申した。 「天使解体」 幼女の死体を綺麗な写真が撮れるように「解体」しようとする男の壊れた精神を、純朴な語り口で描いた作品。圧倒的です。淡々とした描写と凄惨な光景のギャップが凶悪すぎる。ほんとうに嘔吐したくなりました。 「サイレン」 動物を殺すことで性的興奮をおぼえてしまう少年が、ふしだらな姉に祖父殺害を誘われる話。どろっとしたエロくささで窒息しそう。こ