父が亡くなったとき母はまだ40代半ばの自称《女盛り》で「神奈川のモンロー!」「若いエキス吸いまくり!」とはしゃぐ姿には息子の立場から失笑するしかなかったけれども、その女盛りがオーヴァードライブして手を出してしまった下手クソすぎる「独眼竜政宗の岩下志麻のモノマネ」に将来が不安で仕方なかった当時の僕は随分と救われてしまったのも事実なのでおいそれと《自称》と馬鹿に出来ない。 その母もこの秋で70才になる。さすがに女盛りを自称することも、「マサムネェェ!」とクオリティの低いモノマネを披露することもなくなった。お気に入りのニンテンドーDSのテトリスで遊ぶ背中も少しずつ小さくなっている気もするし、鬼のような記憶力も消え失せてしまったけれども、それでもまだまだ元気で僕は嬉しい。65才の定年まで葬儀屋で朝から晩まで働いたおかげで妙な体力がついてしまったとは本人の弁である。 「子供の頃は病気がちな文学少女だ