戦時中、宇品には旧日本軍最大の輸送基地があった 1945年8月6日、なぜアメリカは広島の市街地を原爆投下のターゲットに選んだのか――。ノンフィクション作家の堀川惠子さんが、その問いの先に「宇品うじな」というテーマを見出したのは、10年ほど前のことだ。 当時、堀川さんは夫の付き添いで月2回ほど大学病院に通っていた。待合室で診察を待つ間、たまたま持ってきていたアメリカによる原爆投下地点の選定委員会の資料に、「重要な軍隊の乗船基地」という記述を見つけた。「あれ? これって『陸軍の宇品』のことだよな、と驚いたんです」と彼女は振り返る。 「広島に生まれ、かつて記者をしていた私にとっても、宇品というのはあまりに印象の薄い場所でした。広島の中心地から4キロほど離れた埋め立て地の先の先。マツダの工場がある以外は、古いドックや倉庫があるだけで、わざわざ行く理由のない場所でしたから。この数年の再開発で大きく変