海外在住日本人、移住者にとっての日常生活は、終わりのない長い旅のようだ。普通の人はふるさとに戻ることで、旅が終わる。それは祖国のどこかだ。 ブラジルで生活を始めて25年以上経ったが、いまだにどこかを旅している感覚が抜けない。 外国で生活せざるをおえなくなった人、それを選んでしまった人にとって、祖国に帰るのは一時帰国の時だけ。 では、どうやって「長い旅」を終わらせるか。どこかの時点で腹を決めて「ここが第2のふるさとだ」と思いこむしかない。いや、そう思い込めるようになったときに、ようやく旅が終わる。 固い、しっかりとした大地を歩いている感覚が、ふるさとで生活している心境だとすれば、移住生活は高いビルの谷間に渡した長くてゆらゆらした綱渡りを、ずっと続けているような感覚だと思う。 たまに日本に帰って成田国際空港の入国ゲート前にある、エスカレーターの上に書いてある「おかえりなさい」という表示を見たと