安倍晋三首相が母方の祖父である岸信介を敬愛、心酔し、その祖父を追いかける形で、「戦争ができる国づくり」にひた走っていることはもはや知らない者はいない有名な話だ。4月29日、米議会で行った演説の際も、安倍首相は冒頭に岸の言葉を引用し、“おじいちゃんコンプレックス”を全世界に開陳した。 しかし、その過剰とも思える岸への思い入れの一方で、安倍が“もう一人の祖父”について口にすることはほとんどない。父方の祖父・安倍寛。岸と同時代に生きた政治家だ。しかし晋三は、インタビューや周辺の証言からは意図的にその存在を拒否している感じさえする。 なぜか? その理由が解き明かされているのが「週刊ポスト」(小学館)5月22日号で始まった、政治ジャーナリスト・野上忠興による連載「安倍晋三『沈黙の仮面』」だ。野上は安倍首相の父・晋太郎の番記者を長く務めた人物で、連載はその息子・晋三の生い立ちを追い、さらに岸家と安倍家