個人補償についての日本政府の態度を見てみよう。 (1)日本政府が原爆被害についての補償請求権をサンフランシスコ講和条約で勝手に放棄した、と考えた原爆被害者は実は日本政府に対して求償請求の訴訟を起こしていてそれに対する判決がこれである。 対日平和条約第19条にいう『日本国民の権利』は、国民自身の請求権を基礎とする日本国の賠償請求権、すなわちいわゆる外交的保護権のみを指すものと解すべきである。 ・・・イタリアほか5ヵ国との平和条約に規定されているような請求権の消滅条項およびこれに対する補償条項は、対日平和条約には規定されていないから、このような個人の請求権まで放棄したものとはいえない。仮にこれを含む趣旨であると解されるとしても、それは放棄できないものを放棄したと記載しているにとどまり、国民の請求権はこれによって消滅しない。したがって、仮に原告等に請求権があるものとすれば、対日平和条約により放棄