おおたに・まさゆき氏=1972年、東京都生まれ。総合研究大学院大博士課程満期退学。著書は『角行系富士信仰 独創と盛衰の宗教』(岩田書院、2011年)、『富士講中興の祖・食行身禄伝』(岩田書院、13年)。富士信仰に関する論文・研究発表多数。 富士山が世界遺産に登録されたことで、その信仰に目が向けられるようになった。富士信仰のうち、富士講やその派生である不二道、また明治時代になって彼らが様変わりした実行教・扶桑教・丸山教といった教派神道諸教団などを、筆者は大きく「角行系富士信仰」と呼んでいる。「角行系」とは筆者の造語で、「自らの富士信仰が角行藤仏(1541~1646)という行者に由来している」と自覚する集団と個人が含まれる。「富士講」には修験道に基づく中部・近畿地方で行われるものと、主に関東で行われる角行系に属するものとがあって、二つの習俗は全く異なっているが、本稿の「富士講」はもっぱら角行系