「テッチャン。ちょっと待ってよ、テッチャン」 ハラ美の声が聞こえた。 「なんで……なんで……なんで私を焼いてくれないの? もう私は用済みなの?」 言えなかった。ハラ美に本当のことは。ハラ美よりカル美の方がいいなんて。並のハラ美より、特上のカル美がいいなんて。 ハラ美は常に筋張っていた。そこがハラ美の良さであり、その繊維質を感じさせる性格が、ハラ美の良さということは、これまでの長い付き合いでジュウジュウ承知していたことだが、特上のカル美と出会ってしまうと、どうしても見劣りを感じてしまった。 カル美には一切の筋張ったところがなかった。まろやかに全てを包み込む母なる味わい。融点の低い脂。噛むと甘さを感じる。それは確実にハラ美の魅力を上回っていた。まさに特上。並のハラ美では敵うべくもなかった。 「私の……私のどこがいけないの? 確かに並だけど、あなたは……あなたはこれまで散々噛みしめてきたじゃない