また個人間の競争が少ないというのも神話だ。賃金は平等主義的で年功序列だが、職務の幅が広いためポストの差は非常に大きく、査定の差はアメリカより日本のほうが大きい。NHKでいえば、同期で東京の報道局長と北海道のローカル局長は同じ局長級で賃金もほぼ同じだが、社内的な「力」はまったく違う。前者は理事になり、天下りも約束されるが、後者には天下りポストはほとんどない。そしてサラリーマンは賃金ではなく、「本流ポスト」に残ることをめざして競争するのである。 ただし、こうした競争が企業の生産性を高めるとは限らない。それは社内の人脈をつくるゼロサムのrent-seekingなので、生産性にはあまり貢献しない。むしろ減点法の査定がきびしいために調整型の「人格者」が出世して、思い切った戦略がとれない原因となる。著者は日本企業が「集団主義的」ではなく競争が激しいことを実証データで指摘するが、社内競争の激しい日本企業