こころ「どうもあなたは消耗すると、解離の機制に頼ろうとしているような表現が言葉の端々に混ざるね」師匠が指摘する。僕は俯瞰の位置から、彼女が発する言葉を解析する。確かに彼女は「見なければ」「感じなければ」「知らなければ」「分からなければ」という。認識しなければその事象は存在しない。痛みも苦しみも何もかも、認識しなければ起こらなかったのと変わらない。それは確かに長い間使い、慣れ親しんだ防衛の残り香だ。昔、痛覚が弱かった。今もその傾向はある。だから爪が変な抉れ方をしている。でも僕は当たり前に痛いのが嫌いだ。だから歯医者に行くと痛覚を外そうとする。しかし神経を直撃する痛覚までは外せない。これが僕の現状の「狂い方」の限界であると思う。 時々失踪の衝動に襲われる。別に今の生活を捨てて新しい生活を始めたいというわけではない。新しい縁を作り、別の人間として生きたいわけではない。失踪するなら山の中か森の中が