まず、ひとつの言説として「目の前でいじめが起こっていて、目の前にいじめられている人がいて、それを傍観していたならそれはいじめに加担している共犯者と同じだ」という考え方がある。どうも、あるらしい。 これについては、きっと世の中の多くの人にあっては「そうだそうだその通りだ」とも「いやそれは極論だ」とも簡単に言えるんじゃないかなと思う。 自分が理不尽に虐げられて周りの誰も手を差し伸べてくれなかった時の記憶が頭をもたげれば「そうだ、あの時助けてくれなかった奴らがたくさんいた。俺がいじめられているのを目の当たりにしながらそれが自分じゃなくて良かったとホッと胸を撫で下ろしながら、遠巻きに俺を嘲笑っていやがった、あいつらもいじめの共犯者だ」と解釈することができるだろう。 一方で、「たしかに俺はあの時、あいつがいじめられているのを見過ごしていた。あいつがいじめられているあいだは俺がいじめられることはない。