4歳のときに両親が離婚して、僕は4つ年上の姉とともに父に引き取られた。その姉の上の4人の兄姉は母が引き取った。母と暮らしていた家から父の家に行くと、そこには見知らぬおばさんがいて、そのおばさんは、いまにしておもえば父の内縁の妻であった。 まだ小学校に上がるまえだったから、父とおばさんの関係にどういう想像力をはたらかせたのか、その覚えはない。ただ、父のことは「パパ」と呼んでいて、そのおばさんのことは「おばちゃん」といい、かつて一緒に住んでいた母のことが、たとえば姉との会話などでのぼってくるときは、母を「ママ」といっていた。それがおかしいとまではおもっていなかったようにおもう。「パパ」がいて「おばちゃん」がいて、いまでは顔を見ることのなくなった「ママ」がいる、というあたらしい現実を、ありのままに受け入れていた。4歳の子どもにほかになにができただろうか。 小学校に上がって、友だちの家に行ったり、