村上尚己「エコノミックレポート」 チーフ・エコノミスト 村上尚己が、ファンダメンタルズ分析を中心に内外経済・金融市場に鋭く切込みます。(@Murakami_Naoki ) 2014年初から日本株の停滞が続いている中で、メディアでアベノミクス批判が増えていることを紹介した(3月14日レポート等)。これらはいくつかのパターンに類型できるが、最近目につくのが、「賃金下落が、日本のデフレをもたらした主因」という議論である。このロジックに沿うと、「デフレを退治するには、名目賃金が上がる必要がある。金融緩和を軸としたアベノミクス発動で、名目賃金(やインフレ率)は上昇しない」ということになる。 さらに発展させると、「日本銀行の金融緩和強化は、脱デフレに繋がらない。金融緩和では名目賃金は上がらず、実質賃金が下がるだけ」という主張にもつながる。2013年に起きた、景気回復・大幅な株高・円高修正・有効求人
来週の重要経済指標をPDF版のレポートに掲載しています 昨晩(3月6日)の為替市場でユーロ高が大きく進んだ。ECB(欧州中央銀行)の政策理事会で、政策金利の据え置きが決定されたことが大幅なユーロ高をもたらした。先週末から、今週の金融緩和(政策金利引き下げ)の観測記事がメディアで増えていたため、市場では追加金融緩和がかなり意識されたが、ECBの判断は据え置きだった。 ECBの政策決定をうけ、ユーロドルは1.385まで大きく上昇している。2013年後半に、何度か1.380付近でユーロ高が抑えられていたが、昨晩このラインを超え、ユーロ高トレンドが明確になった。もう少し過去を遡ると、2012年のギリシャの離脱・ユーロ崩壊シナリオ後退から続く、ユーロ高トレンドがなお続いていることになる(グラフ参照)。 2011年の債務危機で欧州は景気後退に陥り、その後の危機対応で景気後退から脱した。欧州経済の
村上尚己「エコノミックレポート」 チーフ・エコノミスト 村上尚己が、ファンダメンタルズ分析を中心に内外経済・金融市場に鋭く切込みます。(@Murakami_Naoki ) 2月20日レポートでも紹介したが、アベノミクスに対する懐疑的な主張を、メディアで最近頻繁に見かけるようになった。先日、某機関投資家と話をする機会があったが、「アベノミクスには失望している。もう、日本株を押し上げる材料にならない」という見方が広がっていることが話題になった。 「アベノミクスに失望した」という理由は、各人で様々だろう。先日のレポートで取り上げたWSJ紙社説のように、貿易赤字拡大をネガティブに考える方もいる(妥当ではないと思うが)。また、いわゆる成長戦略の進捗が鈍いことに失望している方もいるだろう。あるいは、安倍政権の政策運営の力点が、経済以外の面にシフトしつつあることも影響しているかもしれない。 成長
村上尚己「エコノミックレポート」 チーフ・エコノミスト 村上尚己が、ファンダメンタルズ分析を中心に内外経済・金融市場に鋭く切込みます。(@Murakami_Naoki ) 先週末にG20(財務相・中銀総裁会議)が開催された。ドル相場が政治的な要因で左右された1990年代半ばまでのように、G7(やG20)の声明が為替市場などに大きく影響を及ぼすケースは最近かなり少なくなっている。今回のG20も同様で、目先の為替市場などに直接及ぼす影響は限られるだろう。 一方、今回のG20では、「各国で今後5年で成長率を2%底上げ」する数字目標が明記された。G20で掲げられた目標については、実際に数字に拘束力はないし、「どこまで具体的な政策協調を実現していけるかはまだ不透明」(日経新聞)と懐疑的な見方が一般的の様だ。また、米国と議長国のオーストラリアが主導したとされる数値目標について、目標設定に慎重だっ
村上尚己「エコノミックレポート」 チーフ・エコノミスト 村上尚己が、ファンダメンタルズ分析を中心に内外経済・金融市場に鋭く切込みます。(@Murakami_Naoki ) 来週の重要経済指標をPDF版のレポートに掲載しています 日本の貿易収支の赤字拡大が、メディアで話題になることが多くなっている。過去2年余り貿易赤字が広がったことには様々な側面がある。ただ、一部の大手電機メーカーの業績不振が目立つので、日本企業の「稼ぐ力」の低下と関連づけられ、ネガティブに伝えられることが多い。 貿易赤字の拡大=稼ぐ力の喪失、という側面は分かり易い。なので、貿易黒字拡大が「良い」、貿易赤字拡大が「悪い」ので、貿易赤字拡大=「貿易収支の悪化」などとメディアで言われる。ただ、一国全体の貿易収支(経常収支)は、国全体の輸出と輸入のバランスである。そして輸出<輸入となることで、経済全体に悪影響を及ぼしたり、
村上尚己「エコノミックレポート」 チーフ・エコノミスト 村上尚己が、ファンダメンタルズ分析を中心に内外経済・金融市場に鋭く切込みます。(@Murakami_Naoki ) 来週の重要経済指標、主要企業決算についてPDF版のレポートで解説しています 2013年末まで日本経済は堅調な回復が続いている。いくつかの要因が影響しているが、4月からの消費増税前の駆け込み需要が、住宅や乗用車や耐久消費財に表れていることがある。 そして、4月の消費増税以降、この駆け込み需要の反動減がどの程度表れるか?筆者は、駆け込み需要の反動減の悪影響は長期化しないと想定しているが、仮にこのショックが大きく長引けば、2014年度の低成長・株安要因になる。そのリスクを判断するのは現段階では難しい。 ただ、駆け込み需要の動きが一足早く表れる業界がある。それは住宅業界である。9月までの契約について消費増税5%が適用さ
本日(1月16日)日経新聞において、マネーストックの2013年の増加率が前年比+2.9%と大きな伸びになったことが報じられている。マネーストックとは、企業や個人などが保有するマネー(現預金など)の総額である。 記事では2013年通年の伸び率の高さを紹介しているが、月次の動きを確認すると、2013年1月は2%前後の伸びだったが、2013年末には3%超の伸びに高まっている(グラフ参照)。アベノミクス発動による景気回復が続く中で、企業や家計が保有するマネーが増えているということだ。 記事で紹介されているが、マネーストックが増えている要因の一つは、大幅な株高を支えた利益拡大で企業の手元資金が増え、それが預金の増加をもたらしていることである。 なお、1990年代末にマネーストックが大きく伸びたのは、当時は、大手金融機関の破たん懸念が高まり、企業や家計が「予備的な手元資金」を増やしたことで説明で
村上尚己「エコノミックレポート」 チーフ・エコノミスト 村上尚己が、ファンダメンタルズ分析を中心に内外経済・金融市場に鋭く切込みます。(@Murakami_Naoki ) 来週の重要経済指標、主要企業決算についてPDF版のレポートで解説しています 日本経済は、アベノミクス発動直後2013年1月から半年間は年率約4%の高成長となり、その勢いを保ち2013年度通年で+2%台半ばの成長を実現する見通しである。3年ぶりの高成長と円安の後押しで企業業績が大きく改善したことが、アベノミクス1年目の歴史的な株高を支えた。アベノミクス2年目の2014年度日本経済はどうなるか? 2013年度と2014年度で異なる点が、景気回復を支える経済政策だ。2013年度はアベノミクス発動で、金融政策、財政政策ともに総需要を押し上げた。2014年度になると、金融緩和というアクセルを踏み続けるが、財政政策では消費増
12月26日レポートでは、1ドル100円台が定着しつつあるドル円相場は、購買力平価で算出される均衡値に近い水準にあることを紹介した。この視点で長期的なドル円相場の位置を考えると、2013年に大きく円安が進んだが、「円安過ぎる」とは言えない。 以下では、現在の為替レートが、日本の製造業の価格競争力や行動に及ぼす影響を考えてみたい。購買力平価が示すドル円と実際のドル円を比較しているが、現在のように両者がほぼ一致するところまで円安になったのは、2007年以来である(グラフ参照)。 2007年半ばのドル円は1ドル120円前後である。現在の100円台の水準からみると、かなり円安水準にみえる。一方で、「購買力平価の理論値と実際の為替レートの差」は、輸出産業の価格競争力を表す。購買力平価の理論値より円高過ぎると、日本の製造業の価格競争力が低くなる。購買力平価との格差という視点でみると、現在の100円
明けましておめでとうございます。本年もマネックス証券並びに本レポートを宜しくお願いいたします。 2013年末に米国株市場は高値を更新した後、年末年始を挟んだ週間ベースでやや調整した。年始1月2日にダウ平均株価が100ドルを超える下げとなり、年末までの上昇を打ち消した(グラフ参照)。ただ、この日、特に大きな悪材料が出たわけではなく、アナリストによる個別銘柄の投資判断引き下げなどが、材料になったと報じられている。 12月18日の米FRBによるテーパリング(量的金融緩和縮小)決定から、一本調子で株高・金利上昇が続いていたが、さすがにその勢いが一服したということだろう。米国のファンダメンタルズの指標をみると、株価が下げた2日に発表された12月のISM製造業景況指数は、前月から若干低下した。ただ、前月(11月)までかなり改善していたことを踏まえれば悪くない結果である(グラフ参照)。 他の米経済
米FRBによる量的金融緩和縮小をうけて、年末にドル円相場は100円台半ばまで円安が進み、100円台が定着しつつある。米日の金融政策を巡るニュースや、株式・債券市場の値動きで為替相場は日々動くが、現在のドル円相場の水準は、やや長い目でみてどう評価できるだろうか? 筆者は、2013年2月頃執筆した拙著「円安大転換後の日本経済」などで、アベノミクスという日本の経済政策の転換がドル円相場に及ぼす影響を考察し、円安(円高修正)が進む余地として105円という数字をお示しした。この時目安として使ったのは、IMFによる購買力平価に基づいたドル円の理論値だった。 ドル円などの通貨の交換価値は、それぞれの通貨価値つまりインフレ率の動向で長期的に決まる。日本だけでデフレ(低インフレ)が続けば、マネー(=通貨)の価値が高まるので円高に動く。このメカニズムは長期的な為替相場の方向性を示すだけで、常にこの理論値に向
昨晩(12月18日)、米FOMCで量的金融緩和縮小が決定された。毎月850億ドルの国債等の買い入れ金額が750億ドルに減額され、2012年9月に導入された量的緩和策が今後減少する方向に転じた。FOMC声明文において、資産買い入れ減額が規定路線ではなく、今後の会合で買い入れ縮小の判断を経済指標などで随時検討することも示された。バーナンキ議長も会見でこの点を強調している。 これまでの、いくつかのレポートでお伝えしたが、米国では雇用、消費、住宅、企業景況感などほとんどが回復を示していた。もともと、9月に量的金融緩和縮小を見送ったのも僅差の判断だった。もう少し待つ余地はあっただろうが、最近の幅広い景気指標の改善を踏まえれば、量的緩和縮小は既に時間の問題だったと言える。 また、声明文においては、「予想されるインフレ率が2%以下なら、失業率が6.5%以下に改善しても、現行の政策金利水準を十分な期間
村上尚己「エコノミックレポート」 チーフ・エコノミスト 村上尚己が、ファンダメンタルズ分析を中心に内外経済・金融市場に鋭く切込みます。(@Murakami_Naoki ) アベノミクス発動で2013年1-3月に日本経済は回復へ転じ、2013年前半は年率換算で4%前後の高成長となるなど、これまで順調な回復が続いている。日本経済の成長を牽引したのが個人消費で、株高などの資産効果が消費活動を強く刺激していた。 一方で、国内需要の両輪である企業による設備投資には、個人消費と同じような目立った回復はみられていない。7-9月期の設備投資は前期比+0.2%とほぼ横ばいに止まるなど、アベノミクス発動後もその増え方は依然として鈍い。個人消費同様に増えている、公共投資や住宅投資と比べても出遅れが目立っていた。 2014年4月から、消費増税で個人消費には急ブレーキがかかる。その悪影響を相殺する格好で設備
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