2005年春、ソウルの江南(カンナム)で、キム・ヒョンソク監督をはじめ、私たちは映画「クァンシクの弟クァンテ」の編集室に集まって作業をしていた。その時、俳優キム・ジュヒョクが、マネージャーも同伴せず一人でこっそりやってきた。住んでいる家から近く、編集がどういう風に進んでいるのか気になって寄ってみたという。彼が1、2時間座っている間に編集室の前に止めていた彼の車を動かしてほしいと電話がかかってきた。一緒にいた演出部や編集室のスタッフにキーを渡してもよさそうなものを、彼は直接出て行って止め直し、戻ってきた。少ししてまた電話があって、彼はまた出て行った。もう1回ぐらい、同じことがあった気がする。その時私は、キム・ジュヒョクという俳優は気さくな人だと思った。 「あの時、なんでああしたの?」と、とりとめもない質問をしようにも、彼はもうこの世にいない。先日、故人となった彼の一周忌を追悼する場があった。