復興庁は13日、東京電力福島第一原発の処理水に含まれる放射性物質トリチウムの安全性をPRする目的で作成したチラシを発表した。チラシには、トリチウムが自治体の広報で使われる「ゆるキャラ」のようなかわいらしいデザインのキャラクターで登場する。
「乙女の碑」とだけ刻まれた小さな碑が、岐阜県白川町黒川にある。何のために建てられたかの説明はなかった。地元でも語るのはタブーだったからだ。先の大戦時にこの地から旧満州(中国東北部)へ渡った黒川開拓団で、終戦直後、若い女性たちがソ連兵へ「性の接待」に差し出された歴史があることを「乙女」だった老女が公表するまでは。 そんな当事者たちの告白を二〇一七年にNHK ETV特集にまとめたディレクターと取材班が、関係者の証言や写真に加え、番組放送後の人々の変化まで記したのがこのフォト・ルポルタージュだ。 黒川開拓団約六百五十人は、終戦の日を境に、土地や家を奪われていた現地の人々から激しい襲撃を受けはじめる。隣村の開拓団は集団自決。追い込まれた黒川開拓団は、近くに駐留していたソ連兵に警備などを依頼し、見返りとして女性による「接待」を提供することになる。 白羽の矢が立ったのは、数えで十八歳以上の未婚女性十五
前東京都知事で二〇二〇年東京五輪・パラリンピック招致を推進した猪瀬直樹氏(68)が共同通信の取材に応じ、新国立競技場の建設計画見直しについて、「在任時から建設費用が不透明だと思っていた。招致の時に国民が抱いた夢がこの問題で壊れ、国際社会に悪印象を与え、悔しい」と語った。 東京五輪の開催が決まったのは一三年九月。約一カ月後には、当初千三百億円だった工費が三千億円との試算が明るみに出た。猪瀬氏は「なぜ三千億円になるのか説明が無く、分からなかった」という。 事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)に疑問の目を向けていた猪瀬氏は「競技場の周辺整備の費用負担に関連して専門機関を設け、競技場本体の費用もチェックするつもりだった」が、自身は徳洲会グループから五千万円が渡った問題で一三年十二月、知事の職を辞した。
仕事に今ほどクリエイティブ(創造的)が求められる時代はない。経済界は「創造的な人材」を求め、学生を社会に送り出す大学にも「クリエイティブ・ライティング」など、この語を冠した課程が山ほどある。 「今、労働者のモデルは、米アップルの創業者スティーブ・ジョブズ。iPadなどを次々と生み出し、アイデア一本で生きるイメージです」と、編著書『アフター・テレビジョン・スタディーズ』(せりか書房)で「批判的クリエイティヴ産業論へ」を説いた東京芸術大准教授の社会学者、毛利嘉孝(よしたか)さん(51)は語る。「でも、皆がジョブズになれるわけがない。99%は『クリエイティブにならなければ』という強迫観念だけを持ち続けることになる」 クリエイティブ産業とは音楽やデザインなどの著作物を作り出す業種だけではない。今やコンビニや居酒屋のアルバイトでも、客の応対に創造性を求められる時代なのだ。「経済全体がクリエイティブと
国の新しい自殺総合対策大綱(二〇一二年八月に閣議決定)で、若年層の自殺対策は重要課題に挙げられているが、その土台となる研究は極めて乏しい。科学的根拠を高めるため、東京の自殺予防総合対策センターが中心となり、国内外の研究成果や取り組みを紹介する報告書づくりを進めている。先月三十日、東京都内で中間報告会とシンポジウムが開かれ、医療、社会、教育など幅広い発表があった。 (編集委員・安藤明夫) 日本の自殺者数は、一九九八年から十四年連続で三万人台に達したが、二〇一二、一三年は二万七千人台に減少した。しかし、二十歳未満に限ると、九八年から十六年連続で五百人以上と、横ばいだ。 中間報告では、自殺予防総合対策センター副センター長で、報告書づくりの医療班代表の松本俊彦医師が、未解明の部分が多いことを強調。その上で「若年層の自殺対策は、慢性型と突発型に分けて考えていく必要がある」と話した。
雇用の安定を目指すはずのハローワーク(公共職業安定所)で、相談員などとして全国で働く非正規職員のうち、約一割に当たる二千二百人が、この三月末で職を失う。突然「雇い止め」を告げられた職員たちは、業務で失業者の相談に乗りつつ、自らも勤務時間外や休暇に職を探す事態となっている。四月以降、窓口が混乱しないか懸念する声も上がる。 (稲田雅文) 「窓口を訪れた人の中には、雇用保険や職業紹介以外の福祉サービスが必要な場合も。制度の知識と経験が求められる職場なんです」。東海地方のハローワークで、受け付け業務を担う非正規職員の五十代女性は訴える。二月下旬に突然、上司から「任期の更新はしない」と言われた。 職に就いて三年半。雇用保険の給付や職業紹介、訓練など、多種多様な制度への理解をようやく深めたところだった。案内をした人が帰り際に会釈をしてくれると「人の役に立てた」と感じる。退職金や賞与、夏季休暇もなくても
一年前の十二月十六日、政府が突然、東京電力福島第一原発の「事故収束」を宣言した。被ばく線量が高い作業が今後増えるにもかかわらず、宣言を境に危険手当の打ち切りや給料カットが相次ぎ、作業員の待遇が悪化。最近では作業員が集まらなくなっている。廃炉への道は遠く、民主党から政権を奪い返した自民、公明両党には厳しい現実とどう向き合うのかが問われている。 (片山夏子) 給料は手取りで月額二十万円に届くかどうか。危険手当はなし。寮もなし-。 福島県いわき市のハローワークで福島第一の求人を調べると、こんな実情が浮かび上がった。コンクリートを流し込む枠を作る型枠大工など技術や経験のある人は月四十万円以上と高いが、他の職種は多かれ少なかれ被ばくするのに給料が安い。大半が年収三百万円にとても満たない。 二十件ほどの求人情報を見ていくと、危険手当の記載は一件だけで一日わずか二千円。ほとんどのケースで宿泊費は自分で負
文豪になりきってホテルで「缶詰め執筆」を。新潮社が、小説や自分史などを個人で出したい人のために始めた自費出版事業で、ユニークなプランを打ち出した。川端康成ら文人が利用したことで知られる老舗「山の上ホテル」(東京都千代田区)に泊まり、作家気分で執筆に専念できる。 同ホテルは「鬼平犯科帳」などの著作がある池波正太郎らの定宿だったほか、売れっ子作家に部屋にこもって原稿を書いてもらう「缶詰め」の場所としてよく使われている。
「大学の非常勤講師の窮状を知ってほしい」。こんな声が生活部に届いた。大学教育を支えているのに、生活を満足に支えられない収入に甘んじ、厚生年金をはじめ社会保険にも十分に加入できない。授業中の講義室以外に大学に居場所もなく、常に雇い止めの不安を抱える不安定な立場だという。 (稲田雅文) 「学生も先生が週一度のパート労働者だと思っていないと思います。実情を話すわけにもいかない」。関西地方でフランス語やフランス文学を教える非常勤講師の五十代男性は自嘲気味に話す。 男性は関西の公立と私立の三大学で九十分間の授業をそれぞれ一週間に二コマ、計六コマを受け持っている。報酬は一コマ当たり月二万五千円、一回の授業だと六千円を上回る程度。あとは交通費が出るだけだ。年収は二百万円に届かず、上がる見込みもない。
「冷温停止状態」を通り越し「事故収束」にまで踏み込んだ首相発言に、福島第一原発の現場で働く作業員たちからは、「言っている意味が理解できない」「ろくに建屋にも入れず、どう核燃料を取り出すかも分からないのに」などと、あきれと憤りの入り交じった声が上がった。 作業を終え、首相会見をテレビで見た男性作業員は「俺は日本語の意味がわからなくなったのか。言っていることがわからない。毎日見ている原発の状態からみてあり得ない。これから何十年もかかるのに、何を焦って年内にこだわったのか」とあきれ返った。 汚染水の浄化システムを担当してきた作業員は「本当かよ、と思った。収束のわけがない。今は大量の汚染水を生みだしながら、核燃料を冷やしているから温度が保たれているだけ。安定状態とは程遠い」と話した。
東京電力福島第一原発の事故で、国の原子力安全委員会は四日、三月下旬に福島県内の第一原発周辺の市町村に住む子供約千人を対象に行った放射線被ばく調査で、45%の子供が甲状腺に被ばくしていたことを明らかにした。安全委の加藤重治審議官は「精密検査の必要はないレベル」と話している。 調査は国と同県が三月二十六~三十日に、甲状腺被ばくの可能性が高いと予想されたいわき市、川俣町、飯舘村で、ゼロ~十五歳までの千八十人を対象に実施。45%の子供に被ばくが確認された。 安全委によると、最高値は毎時〇・一マイクロシーベルト(一歳児の甲状腺被ばく量に換算すると年五〇ミリシーベルト相当)に上ったが、99%は毎時〇・〇四マイクロシーベルト以下。同様の換算で年二〇ミリシーベルトに相当するが、加藤審議官は四日の記者会見で「換算するには(調査の)精度が粗い。精密測定が必要な子供はいなかった」と述べた。 国際放射線防護委員会
[評者]渡辺 公三 (立命館大教授) ■世界との多層的関わり映す 現代アメリカ人類学の父、フランツ・ボアズが一九二七年に出版した主著の待望の翻訳である。期待にたがわず、ボアズの鋭い観察と考察を、密度の濃い読書として追体験させてくれた。 ボアズはドイツに生まれ、物理学分野で北極海の研究をしたことがきっかけでイヌイットの人々に接し、人類学に転進した。アメリカで市民権を得て、コロンビア大教員として後進を育てながら反人種差別の論陣を張り、調査を通じてアメリカ先住民の文化の固有の価値を明らかにした。芸術論の古典ともいえる本書は、ボアズが生涯をかけて研究したカナダのブリティッシュ・コロンビア州太平洋岸に住む先住民の造形作品(トーテムポールもそのひとつ)を中心に、文字をもたずに技を伝承する人々の創作の秘密、すなわち世界への関わり方を突き止めようという試みである。 彼らの創造する美は手技の洗練の極致で生み
妊娠したことがある女性の41%は流産の経験があり、流産や死産を繰り返して出産に至らない「不育症」の患者は年間約8万人いるとの研究結果を、厚生労働省研究班が2日までにまとめた。 名古屋市立大の杉浦真弓教授(産婦人科)と鈴木貞夫講師(公衆衛生学)らが、一般の女性を対象にしたアンケートを基に計算した。産婦人科を受診した人などに偏らず、不育症の発生に関して行われた調査は初。 杉浦教授は「流産は一般に思われているより頻繁に起きている。不育症の患者のうち多くは出産できる可能性があるので、積極的に検査や治療を受けてほしい」と話している。 教授らは、2007年2月からの1年間に、愛知県岡崎市で健康診断を受けた35〜79歳の女性のうち503人から回答を得た。妊娠経験がある458人中、流産したことがあったのは190人(41・5%)。2回以上で「不育症」とみられるのは28人(6・1%)、3回以上の「習慣流産」は
政治や企業、家庭などあらゆる場面で、女性も男性も平等に権利と責任を分かち合うことを規定した男女共同参画社会基本法が、六月で施行十年を迎えた。十文字学園女子大社会情報学部教授の橋本ヒロ子さんに十年の歩みと課題などについて聞いた。 (野村由美子) 男性も女性も家庭と仕事が両方できるようにという内容が法律に書かれたのは初めて。女性政策担当部局が各自治体に整備され、男女平等を進めるための条例制定が進み、千葉県以外の全都道府県を初め、四分の一に近い市区町村で作られている。六割近い自治体で基本計画も策定された。多くの自治体で女性センターが作られ、地域の女性団体も力を付けてきた。直接的ではないがDV防止法(二〇〇一年施行)制定の追い風になった。 男女間格差解消のため、一方に積極的に参画の機会を提供する「積極的改善措置」が書かれたのも大きい。都道府県職員の管理職を見ても、法施行時に3・9%だった女性割合が
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