領土問題などを除くと、日本は中国に厳しく対応しているとはいえない。むしろ、経済や人権問題で、日本はアメリカ主導の中国包囲網の「穴」になっている。それは日本政府の意図とは無関係に、日本をアジアの重石にしてきた。 米中対立が深刻化するアジアで、日本にはどっちつかずの方針が目立つが、これは少なくとも結果的に、全体のバランスが大きく崩れるのを防ぐ役割を果たしている。 核不拡散のグレーゾーン 9月15日、アメリカはイギリス、オーストラリアとともに、インド太平洋における新たな安全保障協力の枠組みAUKUSを発足させ、それにともなってオーストラリアには原子力潜水艦の技術が提供されることになった。機密性の高いこの技術の供与は極めて稀で、アメリカにとって初めてのことだ。 中国を念頭においたこの合意に関して、米英豪の3カ国は「原潜の駆動系に関する技術供与で、オーストラリアが核武装するわけではない」と強調してい