この本は名著である。 現代将棋を鑑賞するうえでの必読書ではないかと思う。それほど将棋が強くない人でも十分に楽しめる。九章立てで、一手損角換わり、矢倉、後手藤井システム、先手藤井システム、ゴキゲン中飛車、相振り飛車、石田流、コーヤン流、8五飛戦法という現代将棋の90%以上を占める戦法の「現在」について語り、極めて俯瞰的で包括的な視点を将棋ファンに与えてくれる。また、「将棋というゲーム」の真理の探求を総がかりで行う現代の棋士たち(特にトップクラスの若手棋士たち)の姿を描くルポルタージュとして読むこともできる。 著者の1995年の処女作「消えた戦法の謎」も素晴らしかったが、本書はさらにパワーアップしていると思う。特に感心したところは、やさしい語り口の中に、現代将棋の本質をつく「わかりやすくて深い名言」が溢れていたことである。 現代の将棋は桂という駒の価値を再発見するような歴史をたどっているのかも