外務省顧問 前駐米大使 杉山晋輔 安倍晋三元総理は、第26回参議院議員選挙の投開票が7月10日に行われる直前の7月8日午前11時31分頃、選挙の応援に訪れた奈良県大和西大寺駅北口近くで演説中に、背後から銃弾を撃ち込まれた。筆者は友人から、直ちに流れた速報の一報を知らされすぐテレビのニュースでこれを知り、とにかく一命だけでもとりとめてほしいと祈り続けた。しかしそれもむなしく、同日午後5時3分死亡が確認された。民主主義の根幹をなす選挙の最中の、決して許すことのできない暗殺である。筆者はあまりのショックで、しばらく何も考えることができなかった。 思い起こせば筆者が安倍総理にはじめてお目にかかったのは、ずっと若いころ。いうまでもなく総理の御尊父は安倍晋太郎外務大臣。そのまたご尊父は、戦前東条軍閥内閣に反対を通しても選挙に当選された安倍寛衆議院議員。母方の御尊父が日米安保改定の偉業をなされた岸信介総