そのとき私は、フレイヤというキャラクターの人生に思いを巡らせていた。 彼女は地元紙にコラムや掌編を寄せながら、憧れの作家デビューへ向けて頑張っている、『コーヒートーク』というゲームの中の緑髪のジャーナリストだ。古典的なSF映画やポストパンク期の名曲を引用したり、自分のSNSアカウントで小説家の“ハルカミ・マルキ”を神と呼んでいたりするので、きっと文化的な造詣も深い。ちょっとオタク気質で、音楽も今風のものより、一昔前のものを好みそう。キュアーとかカーディガンズとか少年ナイフとか。マライア・キャリーは聴かない。作家志望だけあって博識だけれど、学を衒うような野暮はしない。ハルカミ好きなら、日本のカルチャーにも詳しいのかも…… といったようなことを、私はたった二語から成る英語の一文を翻訳するために考えていた。 「Good evening!」の一文を。 そんなフレイヤの発する「こんばんは!」はどんな
![【エッセイ】ゲームのキャラにも人生はあって 〜『コーヒートーク』“わんばんこ”の舞台裏〜|Kimitaka/小川室長](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/c1bea60f912b0456a1cf770d01a4e5b4a5781bbc/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fassets.st-note.com%2Fproduction%2Fuploads%2Fimages%2F92592269%2Frectangle_large_type_2_48972013dcfe063332d441529d0f0855.jpeg%3Ffit%3Dbounds%26quality%3D85%26width%3D1280)