そのとき私は、フレイヤというキャラクターの人生に思いを巡らせていた。 彼女は地元紙にコラムや掌編を寄せながら、憧れの作家デビューへ向けて頑張っている、『コーヒートーク』というゲームの中の緑髪のジャーナリストだ。古典的なSF映画やポストパンク期の名曲を引用したり、自分のSNSアカウントで小説家の“ハルカミ・マルキ”を神と呼んでいたりするので、きっと文化的な造詣も深い。ちょっとオタク気質で、音楽も今風のものより、一昔前のものを好みそう。キュアーとかカーディガンズとか少年ナイフとか。マライア・キャリーは聴かない。作家志望だけあって博識だけれど、学を衒うような野暮はしない。ハルカミ好きなら、日本のカルチャーにも詳しいのかも…… といったようなことを、私はたった二語から成る英語の一文を翻訳するために考えていた。 「Good evening!」の一文を。 そんなフレイヤの発する「こんばんは!」はどんな