かけ算には順序があるのか [著]高橋誠[評者]福岡伸一(青山学院大学教授・生物学)[掲載]2011年7月10日著者:高橋 誠 出版社:岩波書店 価格:¥ 1,260 ■思想史的な問いかけ、なのだ 今、小学校では、「6人に4個ずつミカンを配ると、ミカンは何個必要ですか」という問題に、6×4=という式を書くと、バツにされてしまうという。「教師用指導書」には、かけ算の式の順序を教えるように、と明記されているのだ。かけ算とは、「ひとつ分の数」×「いくつ分」によって「ぜんぶの数」を求める操作であり、順序の理解は、かけ算の導入期のルールとしてぜひ必要なのだという。つまり4×6が正解。 著者は文学部卒。この考え方にひっかかりを感じ、算数教育の歴史をひもといてみた。議論は実に40年ほど前から繰り返されており、今もネットで父母、教師を巻き込んで継続中。古くは数学者、遠山啓、矢野健太郎、森毅なども活発に発言