文科省の検定で,「日本軍の強制による集団自殺」という項目が削除されたという。この問題については,そもそも以前から恣意性がささやかれていたもので,裁判にもなっているので意外でもなんでもなかった。むしろ驚いたのは,強制が事実であったとするグループと,事実でなかったグループの背後にある争点が,単に日本軍に対するイメージの問題に矮小化されていたということである。これは第二次世界大戦における日本の責任を考えるときにしばしば見られる構図である。それは「日本軍の行為が残酷であった。故に日本軍は悪である」という主張と「日本軍の行為に残酷なところはなかった。故に日本軍は悪ではない」という主張に二分される。 しかし,日本軍が悪かどうかということに,現代に生きるわれわれにとってどれだけ意味があるのだろうか?日本軍が悪であったから,賠償しなければならないわけではないし,周辺国の非難を受けているわけでもない(象徴と