アリの巣に“君臨”する女王アリ。その最大の仕事は、長生きをし、卵を産み続けることにある。ところが、交尾をするのは、女王の運命を背負って巣立つ時期の一瞬だけ。そのときの精子を生涯、大事に使っているという。本来、寿命が短い精子を常温で長期間生かしておくためのメカニズムが、甲南大理工学部生物学科(神戸市東灘区)の後藤彩子講師の研究で少しずつ明らかになってきた。(武藤邦生) 後藤さんの実験室には、大量のアリがケースで飼育されている。女王アリだけで数万匹。「世界で1番、女王アリを飼っている研究室でしょう」と胸を張る。 女王アリは、無数のメスの中でエサや温度などの環境によって特別に成長した個体。オスやワーカー(働きアリ)に比べて体が大きく、極端に長生きだ。多くの種で10年以上生きる。海外では29年間生きた記録もあるという。 ■交尾は一時期 「女王」と名はつくが、現実は厳しい。「卵を産めなくなれば、同じ