セミフォーマルのドレスなんて初めて着たから、成人式後の同窓会の席でビールをかけられた時、わたしが最初に考えたのは「クリーニング、どうしよう」だった。 「この人殺し! 阿婆擦れ! お前のせいで、洋子ちゃんは死んだんだ!」 振り返ると、グラスを手にした女の人が泣きながら叫んでいた。はじめは頭の中が真っ白で、それが木下先生だと気づくまで少し時間がかかった。そしてようやく、わたしは二次会のカラオケで歌う曲だとか、久しぶりに会う男子と何を話そうかとか、そんな心配が必要なくなったことを知った。そうか、これが修羅場か。 「三田ちゃん、大丈夫?」 事態をどこか他人事のように認識しながらも、友人に気遣われるうちに少しずつ感情が高まり、やがて表面張力は限界に到達して、結局すこし泣いた。 木下先生には中学時代、2年と3年の時に家庭科を教えて貰ったから、まったく知らない間柄というわけではなかった。だけど特別それ以