新しい人材の登用を考えた徳川家康が、腹心の土井利勝に人物評を尋ねた。まだあいさつに来ないから分かりません、と答えた利勝を家康は叱った。「お前のところへあいさつに出向く者の多くは追従者で、能力に恵まれていない者だ」▼おべっか使いばかりでは、幕府は倒れると家康は憂えたのだろう。「武勇智謀(ちぼう)があり、用に立つ人間ほどあいさつに行くようなことはしないのに、そうした人材を退けてしまうのは、国が衰える始まりだ」▼この後の言葉が有名な「よくよく人の善悪能否をたずねしるべし」。利勝は三代将軍の名補佐役として名を残す。童門冬二さんの著書『歴史のおしえ』から引用させていただいた▼トップの周りが追従者ばかりだったら組織は腐る。いつの時代でも変わらない法則だ。統一球をこっそり飛ぶボールに変えていたことを認めた日本野球機構(NPB)も、この病に侵されていないか▼今季、プロ野球は本塁打が急増した。NPBは変更を