薬の用量、自動車のシートベルト、毎日歩くあの道路――。当たり前に生活にあふれるモノやサービスの多くが、実は男性目線に偏った研究や開発、設計を基にしていたことが分かってきた。「性差」が見過ごされてきたことで、人の生命に危険が及ぶ例もある。こうした現状を変えようと、世界はいま、性差を考慮した研究開発を進める「ジェンダード・イノベーション(GI)」を加速させている。 「椅子を(ペダルに)足が届きやすいところまで動かせるのがすごくいい」。女性農業者の声を生かして開発された井関農機(松山市)のトラクター「しろプチ」を使う女性からはこんな声があがる。同社は「農業女子」を応援するプロジェクトを立ち上げ、これまで男性目線で開発してきた農機を女性向けに改良する試みを進めている。 女性の声を基にしたのは、体格に合わせて座る位置を調節できるスライド機能付きシートや日焼け防止のサンバイザーなど。営業推進部の担当者