2012年02月13日14:25 カテゴリ本テクニカル 偏狭な利他主義と寛容な利己主義 『宗教を生みだす本能』についての記事は、かなりテクニカルな話だが反響が大きかった。ただ、こうした社会生物学的な説明は、社会性昆虫の行動を説明するにはいいが、人間の複雑な行動を説明するには無理がある。本書は、こうした遺伝的な利他性と文化的な集団主義の関係を実験経済学や数値シミュレーションで分析したものだ。 協力を説明する経済学の理論としては、おなじみのフォーク定理があるが、これには欠陥がある。ナッシュ均衡が成立するためには、全員が全員の利得関数を知っている必要があり、しかも一人でも裏切り者がいると、全員が裏切ることが(長期的関係があっても)サブゲーム完全均衡になってしまうのだ。理論的には、フォーク定理は「協力は非現実的な条件のもとでしか成立しない」というnegative resultである。 しかし現実の