なんともいえない不思議な思いばかりが胸をよぎり続けた。私は対局室に居て、目の前で起こっている現象をどのように理解し、あるいは把握するべきなのかと何度も思いを巡らせていた。 2013年12月31日―。年の瀬の慌しさの真っ只中にある東京の中でも一際の喧騒に包まれた明治神宮の膝元、原宿。多くの人で賑わう竹下通りの一角にあるビル内に造られた16畳ほどの和室の中で、静かに密やかに対局は進行していた。 美しい対局室である。 背景には大きなLEDスクリーンがあってそこに色鮮やかな四季の情景が数時間ごとに映し出される。最初は冬の雪景色からはじまり、春から夏へと移行していく趣向という。張り巡らされた襖や床の間の造作はどれも見事なもので、真っ青な畳も鮮やかである。上座となる床の間を背にダミーの駒動かし役である奨励会員がいてその後ろにツツカナを搭載したコンピュータとプログラマーの一丸貴則さん、将棋盤を挟んで船江