昭和は過ぎ、平成も終わりゆくこの頃。かつて権勢を誇った”おっさん”は、もういない。かといって、エアポートで自撮りを投稿したり、ちょっと気持ちを込めて長いLINEを送ったり、港区ではしゃぐことも許されない。おっさんであること自体が、逃れられない咎なのか。おっさんは一体、何回死ぬべきなのか――伝説のテキストサイト管理人patoが、その狂気の筆致と異端の文才で綴る連載、スタート! 【第1話 八王子の空にこだました「キオシ」の叫び声】 おっさんとは本当に死ぬべき存在なのだろうか。 八王子駅のロータリーでバスを待っていると、女子高生の話し声が聞こえてきた。 「マジで死んで欲しい、キオシのヤツ」 何やら穏やかじゃないセリフだが、確かにそう言っていた。確実に「死ね」と言っていたし、「キオシ」と言っていた。「キヨシ」ではなく「キオシ」、そのキオシに死んで欲しい、といった言葉を発していた。なかなか物騒である