最近、おいらの住む南の島のサンゴ礁を巡って、世界中を巻き込んだ論争が起きている。軍事利用のためにサンゴ礁が埋められる事態が迫っており、その保全が争点の一つになっているのだ。おいら自身は、生物学者の端くれとして保全を願っているが、生物保全の意義を科学的に説明することは実はかなり難しい。おいらの足りない知識で申し訳ないが、なぜ科学的意義付けが難しいのかをおいらなりに説明してみたい。 生物学の一分野に保全生物学という分野があり、この数十年で急速に発展した。保全生物学の理論では、生物とくに生物多様性には、環境浄化、気候や生態系の安定化、生物資源の生産など、人類では到底達成できない莫大な価値があるとされる。これらは実際に多くの研究で実証されており、生物多様性を経済価値で評価すると恐ろしい金額になる。しかし、こうした経済価値を重視した視点では、経済価値のない生物種や生態系は破壊して良いという解釈もでき