先日、バルガス=リョサがノーベル文学賞を受賞したと発表された。 だから何だ、というわけでもないが、ものかきとしての自分に平手打ち、あるいは往復ビンタをかましたくなったときに読み返す本、というのが私にはあって、そのうちの一冊がこの『若い小説家に宛てた手紙』である。 ノーベル賞という看板はえらいもので、それまではアマゾンで、まあ数万位くらいの底を這うような売れ行きだった『緑の家』(岩波文庫)が、受賞後いきなり三ケタ台の順位に上がってきたところを見ると、「ノーベル賞を取った小説家ならいちおう読んでおくか」という層がこの世にある程度いるのは間違いないらしい。 しかし、正直いってリョサの小説は軽い気持ちで読み通せるほど素直なものではない。けれども何か読んでみたい、という人に、とりあえず、この本はお薦めである。 まず、読みやすい。リョサが、小説家志望(であろうと思われる)の若者が送ってきた手紙に書いた