弁護士としての仕事の中で、時々思いがけず「科学技術」と遭遇することがあると思います。 たぶん、誰しも、一度や二度は、相手の主張が、「科学的でない」と思ったことがあるのではないでしょうか。また、裁判所の判決に、「科学のことがわかっていない」と腹立たしい思いをしたこともあるかもしれません。読まなくてはならない書類に、何のことかさっぱりわからない科学技術用語がちりばめられていたりもするでしょう。それにしても、「科学的」であるとは、どういうことなのでしょうか。 私は、もともとが科学少女で、子どもの頃は宇宙物理学者になるのが夢でした。偉大な研究業績はあげられなくても、広大な科学の海原で砂遊びをしていられるようになれば、幸せだと思っていました。大学では分子生物学を志したものの、科学者になり損なって弁護士になった私は、法廷における科学をめぐる議論にとまどいました。 検証可能性がそもそもない「科学的証拠」