ウォルターはそんなことで安心はしなかった。"あいつを眠らせる"とか"やつらを眠らせる"と言うのはマフィアの使う言葉だと知っていたからだ。母親から離れた。もう母親の慰めの言葉などいらなかった。彼からすれば、母親はそんなものはとうに吹き飛ばしてしまったのだ。彼女自身の何かを、彼女が信じ、考え、そしておそらく行動していることの根源をのぞかせてしまったのだ。 まだ人間じゃない フィリップ・K・ディック ハヤカワ文庫 − おれたち打ちひしがれて、希望もなく、苦しみのなかで死んでいかなければならなかった者はどうなるのか? おお、生者よ、おまえたちはただ自分が生きているというだけで、そんなにも傲慢になれるものなのか。自分は人間として生きたいなどと、臆面もなくいうことができるのか……それほど生者は死者に勝っているのか。おれたち死んだ人間はどうなるのだ?死んだ人間の正義はどうなるのか。おれたちただ踏みにじら