著:NHKスペシャル取材班 「睡眠負債」という言葉は、2017年の新語・流行語大賞のトップ10に入ったという。英語の”Sleeping Debt”を訳してTV番組として紹介したNHKスペシャルの取材班が、番組では紹介しきれなかったことも盛り込んで世に出した本である。 脳はエネルギー消費が活発な臓器なので老廃物が多く生産される。ところが、脳にはリンパ管が存在しておらず、老廃物を含んだ組織間液(ISF)は脳骨髄液に灌流され、除去しようとする働きがある。この仕組みは「グリンパティック」と呼ばれるが、この老廃物除去の仕組みは、睡眠中において覚醒中の10倍活発になる。 つまり、脳の老廃物の除去活動は睡眠中がもっとも重要なのである。例えば、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβは睡眠不足のマウスで増加することが実験によって確かめられている。その後、十分な睡眠をとらせると、アミロイドβは減ったという。