※今回の創作「風を見た日」は原稿用紙換算で30枚くらい、文字数だけを数えると1万1千字ほどです。1記事あたりの分量としては多い気がしますので、区切りが良いよさそうなところで分けて、4回連載という形で掲載することにしました。分割することで、読みづらくなることがあるかと思いますが、よろしくお願いします。 今回は第二回目です。 第一回目です。 風を見た日 (第2回) 来客を告げるチャイムが鳴った。頼んでおいた引っ越し業者が来たようだ。 昨日のうちに荷造りはあらかた済ませていた。後は運び出してもらうだけだ。この一年間の一人暮らしで増えた荷物は、すぐに捨ててしまえる類のものばかりだったし、もともと私は身軽な方だった。家具の大半は処分するつもりだった。そうでないと、次に住む部屋はここと比べてずいぶんと狭い。 咲子の荷物は家具ごと彼女の実家に運んでもらうことにした。 咲子が遺していったものは、衣類やアク