東日本大震災後、津波で浸水した住宅地の多くは「災害危険区域」に指定され、自分の土地であっても自宅を自由に再建できなくなった。それでも、長年暮らした土地を離れられず、住み続ける人がいる。 東北最大の北上川の河口近くに、宮城県石巻市の吉浜地区はある。佐藤良正さん(69)の家は、その一角にぽつんと立つ。 「何もないでしょう。これが復興の現実ですよ」 かつて56戸が暮らしていた集落は、石巻市の災害危険区域の一つだ。震災後も15戸が残っていたが、市から移転をすすめられ、つぎつぎと土地を離れた。いまでは5戸が残るだけだ。 窓の外には、雑草の生い茂る更地が広がり、工事用ダンプが土ぼこりをあげて走る。「兵糧攻めのよう」と佐藤さんは苦笑した。 震災後、被災市町村は津波に襲… こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みい