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ブックマーク / honz.jp (32)

  • 『コカイン ゼロゼロゼロ』あまりにも凄惨な現実 - HONZ

    コカインという白い薬物をめぐる書は凄惨な事件から始まる。それはキキの物語だ。 キキの物語を語るには、まずこの男のことを知らなければならない。ミゲル・アンヘル・フェリックス・ガジャルド、通称〈エル・バドリーノ〉はメキシコで「コカインの帝王」と崇められた男だ。今も〈エル・バドリーノ〉の時代もコカインの一大生産地はコロンビアだ。しかし、コカインの大量消費国アメリカにコロンビアは遠すぎる。また当時、コロンビア国内ではカリ・カルテルとメデジン・カルテルがコカインの密売ルートの支配をかけて抗争を繰り返し、力を失いかけていた。さらにメデジンの伝説的な首領パブロ・エスコバルは米連邦捜査局(FBI)の買収に手間取り、膨大な量のコカインを摘発され、窮地に立たされていた。 エスコバルは、アメリカとの国境線を支配する〈エル・パドリーノ〉に助けを求める。二人は意気投合し、共にビジネスを始める。警察官から転身し、既

    『コカイン ゼロゼロゼロ』あまりにも凄惨な現実 - HONZ
  • 『老人たちの裏社会』生き地獄化する余生 - HONZ

    65歳以上の高齢者の万引きの増加が話題になったのは20年ほど前だったか。当時は全体に占める割合が1割に達したことで注目を集めていた。 書によると警察庁発表の犯罪統計では高齢者による万引きは2011年には未成年者の検挙数を追い抜き、直近の公表値である13年は32.7%を占め過去最高を記録したという。万引き犯の3人にひとりが65歳以上という状況だ。人口全体が高齢化していることを踏まえても異常な増え方だ 万引きだけではない。ストーカーも60代以上の13年度の認知件数が10年前の約4倍に増え、他の世代の1.7-2.6倍に比べて高い増加率を示す。驚くべきなのは暴行の検挙数。2013年には94年比45倍超の3048人に急増している。原因も「激情・憤怒」が60%以上を占め、次点の「飲酒による酩酊」の14%を大きく引き離す。酔っぱらって、「何だ、この野郎!」と酒場で暴れる老人を想像しがちだが、当に凶暴

    『老人たちの裏社会』生き地獄化する余生 - HONZ
  • 『ぼくは物覚えが悪い』海馬を失った男は、永遠に続く30秒を生きた - HONZ

    今年も残すところあと1ヶ月となり、年忘れという言葉も聞こえてきた。皆さんにとって2014年はどのような年であっただろうか?そして来たる2015年のことを考えた時に、どのような感情が沸き上がってくるだろうか? 年の瀬ともなると、私たちは過去の出来事を頭の中で再現し、その情動を元に未来へ思いを馳せる。年を忘れるというくらいだから、辛かったことや不安な出来事を思い出す方も多いのかもしれない。いずれにせよ私たちは「今」という瞬間を疎かにするくらい、記憶というものに縛られながら生きている。それならば未来もなく過去もなく、現在進行形しか存在しない世界に行けば、不安を取り除くことは出来るのだろうか。 1953年、一人の男がてんかん治療のための脳手術を行った。左右の内側側頭葉を摘出するという実験的な手術であったものの、発作は無事に抑えられるようになる。しかしこの手術は、関わった全ての人にとって決して忘れら

    『ぼくは物覚えが悪い』海馬を失った男は、永遠に続く30秒を生きた - HONZ
  • 『ふしぎな国道』著者・佐藤健太郎氏インタビュー - HONZ

    A.まずはドライブが好きで、あちこち走っていたことから始まりました。で、道路をよく観察していると大小の謎が見えてくるんですね。なぜ、いったん終わったように見える国道が再度現れるのか、なぜ国道100号や111号は全国どこにもないのか、なぜ階段やけもの道みたいな道路が国道指定されているのか。そうした謎を解き明かすことに、どうやら喜びを感じるようです。 Q.それにしても、なぜ鉄道や飛行機ではなく、国道に? 自動車というならまだ理解できますが・・・ A.どうも、僕は1から順に番号がついているものが好きなようです。業である、化学の元素周期表もそうですし。なので、国道は好きでも高速道路にはあまり興味が湧かないのかもしれません。 Q.番号がついているものが好き、というのは理系の方の特徴なのでしょうか? A.ある学会でこの話をしたら、ものすごく共感してもらえたので、たぶん研究者の中にはそういうタイプの人

    『ふしぎな国道』著者・佐藤健太郎氏インタビュー - HONZ
  • マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー

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  • 完全食品ソイレントが突きつけるもの - HONZ

    『ニューヨーカー』の2014年5月12日号に、「ソイレント」という液状品に関する記事が掲載されました。軽~く興味を引かれて読み始めたところ、ちょっと意外なぐらいに、われわれの「」について考えさせる内容になっていたので、ご紹介してみます。 液状のべ物というのは、昨今、それほど珍しいわけではありません。減量したい人のダイエット品にも、ドロドロした飲むタイプのものがありますし、筋肉増強したい人のためにも、タンパク質メインの飲み物はあります。しかしソイレントがそれらと異なる点のひとつは、完全品を謳っている点です。これだけを摂取していれば、ほかには何もべなくてもよいというのです。 ソイレントを考案したのは、ロブ・ラインハートという青年で、品関係というよりむしろ、ITとかSNS系の起業をやりそうな感じに見えます。実際、ラインハートは、ジョージア工科大学卒業後、友人二人とともにIT関係のス

    完全食品ソイレントが突きつけるもの - HONZ
    Cujo
    Cujo 2014/06/04
    なんでこれに投資家が興味を持つのか疑問に思ってたけど「間接的な支援」の意味を持たせてるのかもね。
  • 『原発敗戦 危機のリーダーシップとは』 リーダーには何が必要か - HONZ

    福島原発事故は「第二の敗戦」だった。 著者は、深い敗北感のただなかにいる。わたしたちは何も学んでいないのではないか、日は70年前の敗戦から何も変わっていないのではないか。民間事故調のプログラム・ディレクターとして、ジャーナリストとして、つぶさに事故の経過を調査・検証してきた著者は、敗北感にとらわれながらも、日再出発への道を模索する。 書では事故を時系列的に追うのではなくず、「危機のリーダーシップ」に焦点があてられている。危機に直面したリーダーはどのように振る舞うべきなのか、組織にはどのようなガバナンスが求められるのか。コンパクトにまとめられた書には、敗戦から立ち上がり、次の危機へ備えるためのヒントが凝縮されている。 「第二の敗戦」の因果関係を説明するために文化論(日人論)を用いるべきではないと、著者は説く。文化を悪玉にすれば、責任の所在は不明確となり、どのような努力も事態の改善に

    『原発敗戦 危機のリーダーシップとは』 リーダーには何が必要か - HONZ
  • 『記者たちは海に向かった』 - 半径10kmのジャーナリズム - HONZ

    記録を残すとは、時に残酷なものである。 書の表紙をめくると、そこには一枚の写真が掲載されている。カメラに向かって微笑む、福島民友新聞の6人の記者たち。撮影されたのは、2011年3月9日。後方には激震と津波によって後に消失してしまう「ろうそく岩」もそびえ立つ。そして6人の運命が、やがてジグソーパズルのようにバラバラに引き裂かれていくことを、彼らはまだ知らない。 記録を残すとは、時に希望を生み出す。 2011年3月12日の福島民友新聞の社説は、このような書き出しで始まる。 <私たち福島県民にとって、これまでに経験したことがない、想像を絶する揺れだった。> 一次資料もなく、被害状況も分からず、周囲が安否確認をしているさなかに書き出された文章は、助け合い、支え合うことへの呼びかけを目的とし、多くの被災者の元へと届けられた。 だが、このわずか3日ほどの間に、福島民友新聞の中では想像を絶するドラマが

    『記者たちは海に向かった』 - 半径10kmのジャーナリズム - HONZ
  • 無能な研究者のずさんな仕事……なのか?  除草剤アトラジン問題のゆくえ - HONZ

    除草剤アトラジンをめぐる長年の論争がひとつの山場を迎えているようで、『ニューヨーカー』の2月10日号にホットなレポートが載っていました。アトラジンは日でも使われている除草剤でもあり、今後の成り行きが注目されます。 が、今回の記事はアトラジンの性質というよりもむしろ、医薬品や農薬などの安全性を調べている科学者が、その製品を製造販売している企業にとって好ましくないデータを出してしまったらどうなるのか--しかもそこに巨額の金が絡んでいるときには--という、われわれとして知っておくべき残念な事実に関するものでした。 除草剤アトラジンの問題は、両生類(とくにカエル)の内分泌学を専門とする、タイロン・ヘイズという研究者を抜きにしては語れないようで、『ニューヨーカー』の記事もヘイズを軸として展開されていました。 ヘイズは、サウスカロライナ州出身のアフリカアメリカ人で、彼が生まれ育った地域では、人口の

    無能な研究者のずさんな仕事……なのか?  除草剤アトラジン問題のゆくえ - HONZ
  • 無私が人を救う。『命のビザを繋いだ男』 - HONZ

    その男は今、エルサレムの墓地に眠っている。 日人として初めて審問を受けて正統派ユダヤ教に改宗し、74歳で永眠すると、彼を慕う多くのユダヤ人たちの手によって、その遺体はイスラエルに埋葬された。 彼こそが「命のビザを繋いだ男」、小辻節三だ。 「命のビザ」といえば、杉原千畝だ。1940年、ナチスの迫害に追われてリトアニア日領事館に逃げ込んだ多くのユダヤ難民たちに、国外務省の訓令を無視して独断でビザを発給し、「日のシンドラー」といわれたその偉業は、広く知られている。 でも、杉原が発給したのはあくまで通過ビザであり、許可された日滞在期間はせいぜい10日程度だったことは、あまり知られていない。最終受入国の入国ビザなど持っていない大半のユダヤ難民たちは、わずか2週間ほどで次の受入国を固めて、出立の船便まで確保しなければならなかった。ビザの有効期限が切れると、国に強制送還されてしまう。それは、

    無私が人を救う。『命のビザを繋いだ男』 - HONZ
    Cujo
    Cujo 2013/05/25
    This is somewhat embarrassing, isn’t it?
  • 『なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか』 地獄を見た司令官 - HONZ

    地獄というものがこの世に存在するのなら、著者が1994年にルワンダで見た光景こそ、そう呼ぶに相応しい。徹底的に破壊された都市、拷問の限りの果てに殺された人の山、その死体をべて犬の大きさにまで成長したネズミ。そこには、正気を保っているほうが異常であると思われるような、圧倒的な現実が広がっていた。 書の著者であるカナダ出身の軍人ロメオ・ダレールは、1993年10月にPKO部隊の司令官として内戦の続くルワンダに国連から派遣され、80万人の命がたった100日間で失われたジェノサイドを目の当たりにした。事態の鎮静化後に司令官を辞任したダレールは、カナダへ帰国してからもうつ病やPTSDに苦しみ、2000年にはアルコールとドラッグを用いて自殺未遂を起こす。 苦しみ続けた彼は、世界にルワンダの悲劇を伝えるために、そして、二度と同じような悲劇を起こさないために地獄の体験を振り返り、書にまとめた。この

    『なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか』 地獄を見た司令官 - HONZ