十二世紀から十八世紀にかけて、フランス・ドイツを中心とした西ヨーロッパ一帯で盛んにおこなわれていたのが、動物や昆虫を被告として正規の裁判にかけて裁く「動物裁判」という慣習であった。この中世・近世期ヨーロッパに特異な法慣行はなぜ行われていたのか、その実態を浮き彫りにする、1990年の発売以来ロングセラーとなっている一冊である。 本書は二部構成で、第一部では史料に登場する多数の動物裁判事例が紹介される。例えば、冒頭に紹介されている動物裁判の例は1457年1月10日、フランス・ブルゴーニュ地方サヴィニー村で起きた、五歳の少年を食い殺した雌豚に対する裁判である。前年1456年末、仔豚たちに餌をやっていた被害者ジャン・マルタンに突然襲いかかった母豚が食い殺してしまった。これに対し、ブルゴーニュ公の侍臣を裁判官とし、豚の所有者と「実行犯」の母豚および仔豚六匹を被告、サヴィニー村の領主を原告、さらに検察
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