西洋音楽史における前古典派Vorklassik(ドイツ語)、preclassics(英語)は、バロックから古典派への過渡期で、古典派の書法、形式、楽種を開発、育成していった作曲家たちをさす。狭くは、マンハイム楽派や北ドイツ楽派が活躍する1740年ごろから、ハイドンが本格的に創作を開始する1760年ごろまでの時期、とも考えられる。しかし、古典派の器楽を代表する交響曲と古典派の中心形式となるソナタ形式に関して、近年の研究は、すでに1730年代までにはその輪郭をもった作品が作曲されている事実を明らかにしている。また、一般に初期古典派とよばれる1760年ごろから1780年ごろまでのハイドンとモーツァルトの作曲活動を振り返るとき、前古典派の作曲家たちと同じ試行錯誤がみいだせる。こうした観点にたつとき、前古典派の時期を1730年ごろから1780年ごろまで、と拡大解釈すべきであるように思われる。同時に、