ベルギーのゲント大学で教鞭を執る科学哲学者のマルテン・ブードリーは、「環境問題を解決するには人口を減らすしかない」と主張する人たちに真っ向から反論する。 ブードリーが危惧するのは、人口減少と高齢化による科学発展の遅滞だ。彼が示すデータの数々から見えてくる「人口問題のバイアス」とは? 人が増えれば資源も増える 私が気候変動について話すと質疑応答では必ずといっていいほど「なぜ人口過剰の話をしないのですか」と聞かれる。私たちが抱えるすべての問題の原因は、一言でまとめられると質問者たちは信じて疑わない──そう、人口過剰だ。 人間は増え続け、人口密度のグラフは急激な増加曲線を描き、悲劇的な結末が私たちを待ち受けている。まるで時限爆弾のように、いつか爆発する……。彼らはそう信じているのだ。 しかし、人口過剰の問題など存在しない。それどころか近い将来、私たちは急激な出生率低下による深刻な人口減少に悩むこ