しかし、ヒグマがそのまま山中へ帰ることはなかった。その足で太田宅から500m離れた明景宅を襲ったのだ。ここには大人3人と、子供7人が避難していた。激しい物音と地響きがすると、ヒグマが窓を打ち破り、いろりを飛び越えなだれこんできた。大鍋はひっくり返りランプは消え、たき火は蹴散らされ、逃げまどう人々に次々と襲いかかる……。結果的にこの襲撃で5人が殺害され、3人が重傷を負った。 事件発生後6日目、討伐に加わっていた猟師によってヒグマは射殺された。重さ340kg、体長2.7m、立ち上がった高さは3.5m、推定7~8歳のオスだった。死骸をソリに乗せて運んでいると、それまで晴天だった空が一転して大暴風雪となった。この天候の急変は「羆嵐(くまあらし)」と名付けられ、いまも当地で語り継がれている。 史上最悪の獣害の現場へ 時は変わって2019年夏、私は北海道を旅していた。夕張、赤平などの炭鉱跡がある空知地
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