核戦争で世界が破滅する可能性は、正確にはどれくらいあるのか──そんな計算をしながら、米マンハッタンのミッドタウン地区で哲学者と昼食をとる姿は通常なら奇異に映るだろう。 だが、いまは平時ではない。ロシア国営テレビに出演した論客は、イギリスが核攻撃を受ける可能性があると平然と言った。ウクライナ南部ザポリージャ原子力発電所の周辺では戦闘が勃発し、中国は台湾近辺で大規模な軍事演習をおこなった。 今日のランチの相手であるウィリアム・マッカスキルは、普通の学者の枠には収まらない。グラスゴー出身ですきっ歯の彼は、7年前に28歳という若さでオックスフォード大学哲学科の准教授になった。いまは著名な知識人であり、イーロン・マスクなど、シリコンバレーの巨人たちも彼への支持を表明する。 「効果的な利他主義」についてTEDで講演するウィリアム・マッカスキル。1987年、イギリス生まれ。オックスフォード大学の哲学准教