思考の筋道を追うと、思い出したことが一つある。 昔お世話になっていた編集者さんが、こんなことを言っていた。 「作家は身内の厳しい言葉と、ファンからの甘やかしで育つもんだ」 曰く、厳しい声はどうせ編集者や作家仲間などの身内から聞けるので、ファンからはひたすら好意的な声だけを聞いて、それをやる気に変えていけばいい、と。創作者にはファンからの好意的な声がなによりも必要だ、と。 以前、ファンレターを渡す方針に困る編集者さんのことを書いたが、上記の編集者さんはそんな考えから、自分が担当する作家さんに決して悪評の声を渡さなかった。最近はどうなのか知らない。私の不義理もあって、あまり連絡をとらなくなってもう随分になる。 勿論、万事に当てはまることではないだろう。作家さんでも漫画家さんでも、ファンの声で増長してしまう人も、ファンに叱られて伸びる人も、好意的な声に慣れきってしまった人も多分いるのだろう。けれ