茨城県は筑波大学。11月を過ぎた辺りから、大学内はどこもかしこもピリピリとした雰囲気に包まれていた。人通りが多い場所には片端からチラシが貼られ、窓という窓は紙が貼られ。「筑波大学」という腕章を付けた人間が学内を忙しく歩き回る。そして、職員に混じってじろり、と凄みを聞かせている、茨城県警の腕章を付けた人間まで。まるで、学徒運動が始まる直前のような緊張感。 そして迎えた11月12日。その日の筑波大学は、これまでにない緊張感に包まれていた。学内の通行は規制され、スーツ姿の人間がそこかしこに立っている。 「なんだ、この緊張感は。」 一限目の講義に遅れ、急いで教室に急ぐ私は驚いて自転車の速度を落とした。ここ暫くの筑波大学は異様な雰囲気に包まれていたが、ここまでの緊張感を感じたのは、これが初めてだ。 「あの、すいません。こちら通れないんですよ。」 雰囲気に飲まれ、呆然としている私に声を掛けてきた筑波大