福島県桧枝岐村から日本の全土に向けて飛ばされた電波が止むと、お茶の間にはそれまで映っていた番組が戻ってきた――ある家庭ではCGで再現された森田一義の『笑っていいとも』が、ある家庭では何十年も前に体の一部を機械化することによって人間機械と化したみのもんた2.0の『思いっきりテレビ』がいつもどおりに画面に映し出された。その次の瞬間、巻き起こったのはテレビ局へのクレーム電話の嵐だった――「今、映りこんだ映像は何だ?」「冗談が過ぎる!」。全国のテレビ局の電話対応室に視聴者からの電話が殺到する。北海道県知事、杉村太蔵がおこなった北日本連邦独立宣言を正確に受け止めることができたもの、というよりもむしろ真っ当に受け取ることができたものは誰一人としていなかった。杉村の宣言を誰もが何かの間違い、たちの悪い冗談だと思っていた。 15分後、東北新幹線の線路が爆破されるというニュース速報が入ってくるまでは。 新白