物心ついたときから牛乳が苦手だった。牛乳に対してトラウマがあるわけでもない。牛乳についての僕の記憶は、忘れられがたいもので彩られている。 たとえば、小学生の頃、それは昭和五十年代後半の大昔なので現在とは教育事情が違うけれど、担当教諭から「牛乳を噛むように飲め」と指導された僕は、生真面目さ故だろうか、液体である牛乳をうまく噛むことが出来ず口の端から牛乳を垂れ流してしまい、罰として反省文を書かされたり…またあるときは愚連隊のような長ズボン軍団から三角パック牛乳を投げつけられたり…そんな記憶ばかりだ。 僕に対する不満を隠そうともしない妻は、最近、僕にふざけた人生を清算させて真人間に生まれ変わらせようとしている。いわば真改造。僕は妻の信頼と愛を再獲得するために真人間になるしかない。はやく真人間になりたい!そして、妻は、健康雑誌やヘルシー番組の影響なのだろうね、《健全な成人男性には牛乳が不可欠である