殺人的な夏の日差しを避けるために駆け込んだ書店のグラビア雑誌コーナー。表紙を飾るエロティックなビキニギャル。悩殺的な彼女たちの前で、何の前触れもなく、ヒロシさんのことを思い出した。彼の名前が頭に浮かぶのは何年ぶりだろう?ヒロシさんは僕の遠縁にあたる。僕の母の妹の旦那さんの弟(なんていえばいいのだ?)。横須賀の家で僕の叔母さん一家と一緒に暮らしていた。僕が小学3~4年生の頃だから35年くらい前のことだ。母と叔母さんは仲が良かったので、僕はしょっちゅう横須賀のその家へ遊びに行っていた。ヒロシさんは当時30歳くらい、ジミー・ペイジみたいな長髪、ボロボロのジーンズをはいて、裏庭に面した一室に籠るように暮らしていた。その部屋のドアは日の当たらない場所にあって常に薄暗く、独立国のように見えた。 僕はヒロシさんが好きだった。僕を子供扱いしなかったからだ。夏休みも終わりかけた8月のある日。ヒロシさんから「