──書物が数学的構造物であるために、私たちは書物よりも高次元の宇宙から、低次元の宇宙において実際に発生した実在として、書物の世界のできごとを認識することができる(本文より) SF小説では、テクスト論的な立場から「なぜここに今小説があるのか」を問うような作品が多く見られ、SF作家・樋口恭介もまたそのような問題意識を内に秘めた作品『構造素子』でデビューした。 宇宙と文章。抽象的な次元で両者に見られる構造、そしてそれを記述する「数学」という言語。 連載7回目となる今回は、マックス・テグマーク『数学的な宇宙』を取り上げる。 故郷の宇宙で送った人生のほかのあらゆる部分は、とてつもないスケールの旅の中に拡散して意味を失っていたけれど、時間を超越したこの世界は、いまも完璧に意味のあるものだった。つまるところ、すべては数学なのだ。 ──グレッグ・イーガン『ディアスポラ』 0.すべての可能な宇宙 宇宙は一つ